有責配偶者の悪意の遺棄とはどういう意味なのかを分かりやすく紹介

民法の離婚原因になる要素の一つに「配偶者から悪意で遺棄されたとき」というものがあります。

 

これを通称「悪意の遺棄」と言いますが、「悪意の遺棄」と言われても、その言葉だけですと、何だか悪い事をしたのかな…というニュアンスは感じ取れるものの、

いったいどのような事を指しているのかは、よくわからないのではないでしょうか。

法律をかじっている人ならば、悪意というのは、知りながらとかそう言う意味でしょ・・・なんて突き進んでしまいそうですが、夫婦間の悪意の意味は違います。

同じ言葉でも使用する意味合いが違うんですね。

間違った認識で進んでしまうと後で面倒なことになりますよ!

そこで、今回は「悪意の遺棄」とは、具体的にどういう意味なのかについてご紹介していきたいと思います。

 

「悪意の遺棄」という言葉の意味とは

 

まず、「悪意の遺棄」という言葉がどのような意味合いを持っているのかについて、「悪意」と「遺棄」に分けてお話していきたいと思います。

<悪意とは>

ここで使われている「悪意」とは、夫婦間に置いての悪意を指します。

夫婦関係が悪くなっていくと分かっていながら、何かをしたり、または、わざと何もしないという意思の事を言います。

簡単に言うと、「夫婦関係が終わってしまっても構わない」という意識がある事をいいます。

 

<遺棄とは>

一般的に言われる「遺棄」とは、置き去りにするといった意味になりますが、

夫婦関係における「遺棄」とはどういったことを指すのでしょうか。

 

民法第752条に「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という規定があります。

ここで言う「遺棄」とは、キチンとした理由もなく、この規定を怠った時に使われます。

 

具体的に言うと・・・例えば、

「パートナーに何も言わずに家を出て行ってしまって帰ってこない」

「専業主婦の妻に、夫が生活費を全く渡さない」

「夫婦共働きなのに、夫婦どちらか一方が家事を全て負担していて、協力する気持ちがない」

というような、「同居の義務違反」「協力の義務違反」「扶助の義務違反」に対して「遺棄」という言葉が使われます。

 

<悪意の遺棄とは>

この二つの言葉をまとめると、「悪意の遺棄」とは、まっとうな理由もなくわざと夫婦関係が壊れるような行為をしたり、

夫婦関係が壊れていくと分かっていながら、わざと何もしないことを言います。

 

ここで重要になってくるのが、「理由なく」「わざと」その行為を行ったのかという事になります。

 

「悪意の遺棄」は離婚原因の一つに挙げられていますが、この原因だけで離婚が成立するのは、あまり多くは多くはないようです。

それは、その行為が「悪意の遺棄」に相当するようなことであったとしても、

本当に、上にあげたように「理由なく」「わざと」といった「悪意」があったのかという事について証明するのが難しい事が原因にあるようです。

「悪意の遺棄」に相当しない別居とは

 

「夫婦は同居しなければならない」という規則違反である、夫婦の別居は「悪意の遺棄」に該当する行為ではありますが、正当な理由がある別居は「悪意の遺棄」には相当しません。

具体的には例えば、

・パートナーの浮気やDV被害から逃れる為の別居

・単身赴任による別居

・出産や育児、病気療養の為の別居

・夫婦関係に冷却期間を設ける為の別居

などがこれに該当します。

出産や育児、単身赴任は分かりやすいですが、パートナーの浮気やDV被害に遭っての別居や、夫婦の冷却期間の為の別居である場合は、

証拠を手にしたり、夫婦間でキチンと話し合いなどをしてお互いが納得した上で別居を始めていないと、

最悪の場合、家を出て行かれた側から逆に「悪意の遺棄」で訴えられる…なんてことも考えられます。

 

もちろん、キチンとした証拠を持っていれば「悪意の遺棄」として認められることはありませんが、やはりいい気持ちはしないですよね。

では、実際にはどのような行為が「悪意の遺棄」に該当する行為なのでしょうか。

ここからは、「悪意の遺棄」に当たる行為についてご紹介していきたいと思います。

 

「悪意の遺棄」に該当する行為とは

「悪意の遺棄」に該当する行為にはこのような行為があります。

・理由なく生活費を一切渡さない

・健康上や他の理由もないのに仕事をせず、家事も手伝わない

・生活費は渡されているものの、浮気相手のところで生活していて帰ってこない

・パートナーに対して暴力をふるったりして家を出ていくように仕向けたり、家を追いだしたりする

・専業主婦であるのに家事一切をしない

・パートナーが家に帰って来られないようにする

・夫婦で同じだけの時間働いているのに、どちらかだけに家事を負担させ協力しない

・単身赴任していて生活費を送ってこない

・姑とのいざこざがあって実家に帰ったきり帰ってこない

 

他にも、「悪意の遺棄」に当たる行為となるものはありますので、もしも「この場合はどうなのかな…?」と思われる方がいらっしゃいましたら、

弁護士などの専門家に、無料相談などを利用して聞いてみるのも良いでしょう。

「悪意の遺棄」と認められる為に…

 

先ほど、「悪意の遺棄」と認められることは多くないとお話しましたが、どうしても「悪意の遺棄」と認められたいといった場合には、

その行為の証拠や証明となるものを集めておくと良いでしょう。

 

「悪意の遺棄」の証拠や証明とは、夫婦どちらかが「同居義務違反」「協力義務違反」「扶助義務違反」をしたものになります。

具体的言いますと、

・一方的に出て行った時の書置き

・家出したパートナーに「戻ってきて」と言った時に、断られた時のメールや手紙、断られた時に言われた音声の録音…など

・生活費を渡してもらえない時には、預金通帳のコピー(給料が振り込まれる口座)・給料明細…など

・勝手に生活費を使われている時には、クレジットカードの明細・購入してきた物の写真…など

・家事を全く協力しない場合には、散らかった部屋、使った食器が山積みのシンク、洗ってない洗濯物であふれた洗濯機などの写真を撮っておく…など

といったものになります。

こういった証拠は、後々とても重要になってきますので、手にすることができたら大切に保管しておいてくださいね。

 

 

「悪意の遺棄」と認められなかったとしても

 

パートナーの行為は「悪意の遺棄」に該当すると思っているけれど、もしも認められなかった場合には離婚することが出来ないのでは…と不安になっている方もいらっしゃるかもしれません。

これまでにお話してきたように、確かにパートナーに「悪意」があったことを立証するのは難しいケースもあります。

ですが、「悪意」があったかどうかではなく、その行動をすることによって「夫婦関係は壊れてしまう事が分かっていたはずである」ことを立証したりすることによって、

「悪意があった」」と証明していくことが出来る可能性はあります。

 

そして、たとえ「悪意の遺棄」とは認められなかったとしても、その行為が「婚姻を継続し難い重大な事由」として、離婚請求が認められることがあるという事を頭に置いておくと良いでしょう。

 

また、有責配偶者からの離婚請求は認められていません。

相手側に非があるとしたら、勝手に離婚が認められることはありませんので、

まずは焦らずに「悪意の遺棄」に該当するのかという事も含め、慰謝料請求をどうするのか…子供の親権はどうするのか…

といったことについてもじっくりと考えてから離婚請求に踏み切るといいかもしれませんね。

 

 


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