幼児期や、小・中・高校生に至るまでの子供時代にいじめを受け、
その後にいじめの経験が、トラウマとなって体調や精神面に現れる「いじめ後遺症」というものがあります。
いじめを受けてから何年も後になって体調に現れたりすることもありますので、本人が昔のいじめが原因だとは思っていない場合もあります。
そういった方は、うつ病になり、よくよく話を聞いてみると、幼少期のいじめが原因だった…なんてことが・・・
しかし、例え子供時代にいじめられたとしても、周りからのフォローがあれば「いじめ後遺症」にならない場合もあります。
では、「いじめ後遺症」とはどのようなものなのでしょうか?特徴からご紹介していきます。
いじめ後遺症の特徴
・子供の頃にいじめを受けた人がその後すぐから、または大人になってから発症します。
・人によっては、うつ病や摂食障害になってしまう方もいますが、
その原因として、いじめられた経験から、知らず知らずのうちに人に対して恐怖心を持っているというのがあげられます。
・「いじめ後遺症」になると、多くの場合、いじめられた経験が自分自身に非があったからだと思い込み、自分を責めてしまいます。
その結果、自分に自信を持てなくなり、自分を大切に思うことが出来なくなります。
最悪の場合、生きているのが嫌になり、自傷行為をしてしまったり自殺を考えたりしてしまうこともあります。
・また、「いじめ」というほどでもない、ほんの些細ないじわるやイタズラ程度の事でも、人の心は繊細に覚えているものです。
それが、ご自身もいじめられたと思っていなくても、「後遺症」となって後々の人間関係に影響を与えてしまうこともあります。
では、「いじめ後遺症」がもたらす影響とはどのようなものなのでしょうか?ご紹介していきます。
いじめ後遺症がもたらす影響
いじめ後遺症になると、まず人に対しての恐怖心をもってしまうので、人間関係を築くのが上手く出来なくなってしまいます。
ご自身が、いじめ後遺症とは気づかないまま大人になった方が、飲み会など人が集まる場に行くと、周りの人に気を使い過ぎてしまって、とても疲れてしまう…ということがあります。
それでも「自分の性格だからしかたない」と思って、人と円滑なコミュニケーションをとろうと努力してしまうと、更に心にストレスを抱え疲れ果ててしまうのです。
そして、気づいたらうつ病になってしまう…ということもあるのです。
まさに負のスパイラル・・・
そもそもの原因は、いじめられたことによって受けた「人に対する恐怖心」が心に残っていることなのです。
これは、時間や新しい人間関係を築いたとしても消えることは無く、心に残り続けます。
また、脳にも影響をもたらす可能性もあります。
いじめなどの強いストレスを幼少期に受けることで、脳の恐怖や悲しみを司る「扁桃体」が大きくなってしまいます。
扁桃体は、ストレスを感じると指令を出し、体内からストレスホルモンを分泌させ、心臓の鼓動を速めたり、血圧を上昇させます。
これは、人が原始時代に敵から生き残る為に身につけた反応です。危険が迫った時のみに、鼓動を速め血圧を上げることで、体を動きやすくし身を守っていたのです。
しかし現代人は、日常的に盛んにストレスを感じ、ストレスホルモンを出し続けている状態です。
ストレスホルモンが一定量を超えて増え続けてしまうと、脳に吸収されずに脳の一部を破壊してしまう事が分かっています。
そして、扁桃体が大きくなると、ストレスに対して敏感になり、少しのストレスにも体が反応してしまうようになってしまうのです。
また、激しい体罰を受けることで、脳の理性を司る部分の「前頭前野」の容量が減少してしまいます。
前頭前野は、感情や衝動を抑制しています。容量が減少することで、前頭前野の支配力が弱まってしまい、不安を感じたり、普段は押さえこんでいる衝動を抑えきれなくなったりしてしまいます。
脳に影響がでると聞くと、とても怖いですよね。しかし、脳に影響を受けてしまったとしても、きちんと心のケアを受けることで、脳が元に戻る可能性はありますし、機能も回復出来る可能性はあります。
ですから、「いじめ後遺症」だと分かったら、なるべく早めに心のケアを受けることをおススメします。
決して精神的なものだけとは言えないのがいじめ後遺症です。
いじめ後遺症から立ち直る為に
では、実際に「いじめ後遺症」になってしまったら、どのように心をケアしていけばいいのでしょうか。
辛い過去と向き合うことになりますので、ご自身だけでケアをしていくのは、難しいかもしれません。
ここは、心療内科などの専門家の力を借りましょう。
専門家の先生にも、色々な方法を取り入れている方がいるので、まずは、話を聞いてもらって、ご自身に合った先生・治療法を見つけることが出来るといいですね。
どんなにいい療法だとしても、その先生との相性が悪かったりすると、心を開く事なんて出来ないですよね。
治療法としては、カウンセリングで話を聞いてもらって
「自分は悪くないんだ・自分はいじめにあった被害者なんだ」と相手に認めてもらうことで自分に非はなかったんだと認識することが出来るようになる…
または、いじめについて…例えば相手の悪かったところ・相手の嫌なところなどを紙に書くことで、気持ちを整理していくことができ、自分に非がなかったんだと認識する…という方法や、
トラウマになってしまった心を癒す方法として、同じように傷ついた経験を持った人達の中で、
お互いを認め合うことで、傷ついた心を癒していく方法もあります。
他にもいろいろな方法がありますので、どの方法を受けるか考えてから相談しにいくといいかもしれませんね。
まずは、家族の支えが大切
もしも「いじめ後遺症」になってしまっていたら、専門家のところに行くことをおススメしますが、
いじめ後遺症にならないよう未然に防ぐ為には、ご家族の支えがとても大切になります。
「いじめ後遺症」は、幼い時のいじめ経験が原因になっていることが多いのが特徴です。
子供は、あまり相手の事を考えずに自分の気持ちだけで、ひどい言葉を言ったり、仲間外れにしたりしてしまいます。
ですが、それを受けた子供は、まだ受け止め方が上手く出来ずに、心に大きな傷を負ってしまいます。
それは、大人になってもなかなか消える事のない傷になってしまう可能性があります。
ですから、親御さんは自分の子供がいじめをうけていないか、いじめまではいかなくても、お子さんには非がないのに嫌な思いをしている…
なんてことはないか、特にお子さんが幼児や小学生など小さい時には、注意深く見守る必要があります。
いじめられる子というのは、優しくて受け身なタイプの子が多いそうです。相手のいう事に反発したりせず、そのまま素直に受け入れてしまうのです。
そのようなタイプのお子さんは、ひどい言葉を言われ、それを真摯に受け止めて落ち込んでしまう…なんてことになりかねません。
それでも、言われたことや自分の気持ちを親御さんに話せる子は、親御さんもいじめられているかも…と気づくことが出来るでしょう。
しかし、上手く自分の事を話すことが出来ない子もいます。
そうすると、親御さんがその子の微妙な変化に気付いてあげる必要が出てきます。
お子さんが、何となくいつもと様子が違うな…と思ったら、さりげなくその子の気持ちを聞いてあげましょう。
今、どんなことを思っているのか…親御さんと離れている時間はどのように過ごしているのか…
その言葉の中には、「もしかしたらいじめられているのかもしれない」というヒントが隠されているかもしれません。
そして、お子さんの方から、「こんな事があった」といじめについて打ち明けられたら、
お子さんの気持ちを、全て受け止めてあげてください。
それは、どんなに「この子、すごく大袈裟に話している…」とか「どこまで本当なの?」とか「この子にも非があったのではないか」と感じたとしても…です。
お子さんにとっては、親御さんが自分にとっての一番の理解者であってほしいのです。
間違っても批判したりせず、100%お子さんの味方になってあげて下さい。
「そうなんだ、辛かったね」「そんなことがあったの…話してくれてありがとう」「どうしていくか一緒に考えよう」などと、お子さんの気持ちに寄り添いながら、事実を確認していってあげて下さい。
すると、事実を確認していく中で、明らかに大袈裟に話していた事が本当は違ったと理解出来ると、本人の気持ちも整理され、緩和されていきます。
もしも、初めから「あなたの思い込みじゃない?」「本当なの?」などと言ってしまって、お子さんを疑ってしまうと、お子さんはさらに傷つき心を閉ざしてしまいます。
そして、一緒に解決していくように話しましょう。
日本では、「いじめ」問題になると、加害者が100%悪いのに、被害者にもいじめられる理由があったのが悪いなどと非があるように言われてしまう事もあります。
さらに、あまり問題を起こしたくないという考えも持っています。
ですから、園や学校に相談しにいっても、形だけで仲直りさせられたりするだけで、いじめを受けた子供の心のケアまでしっかりしてくれることはないでしょう。
ここは、家族の支えが必要です。
「どんなことがあってもあなたの味方だよ」と理解することで、
子供は、気持ちを強くもつ事が出来て、自分でいじめに立ち向かう勇気を持つことができるようになるのです。
いかがでしたか。
一度傷ついた心を、癒していくのは時間がかかることかもしれません。
しかし自分に合った方法を選ぶことで、完全に傷が消えることは無くても、少しずつでも癒していくことは可能なのです。
ですから、諦めたりせず周りの力を借りてゆっくり癒していきましょう。
またお子さんのいじめについて悩んでいる方は、心配が尽きない事とお察しします。
お子さんへの愛情を持ち、伝え続けてあげて下さい。
この記事が少しでも参考になり、お気持ちが少しでも楽にれば…と思います。
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